平屋の水害対策|垂直避難できない家の備え
「平屋がいいとは思ってるけど水害が起きたらどうだろう」
先日九州の大雨による浸水被害のニュースを見ていたとき、取材を受けた方の言葉が心に残りました。
「平屋だったので垂直避難ができなかった」
平屋にはたくさんの魅力があります。
ただ土地探しや間取りを考えるときには、災害時の逃げ方まで一緒に考えておく必要があると感じました。
川越・東松山・所沢を中心とした埼玉県西部エリアで自然素材の家づくりをしている信濃住宅の森です。
私たちもお客様から平屋についてご相談をいただく機会が増えています。
階段のない暮らしや短い家事動線など、平屋の良さをお話しすることは多くあります。
その一方で、家づくりの仕事をしているからこそ、弱点についても正直にお伝えしたいと思っています。
📖 目次
◆ ニュースで聞いた「垂直避難できなかった」という言葉
先日見たニュースでは、九州の大雨で自宅が床上浸水した方が取材に応じていました。
その家は3年前に新築した平屋だったそうです。
そこで話されていたのが、
「平屋だったので、垂直避難ができなかった」
という言葉でした。
ニュースの一部分だけで、その方の家づくりや避難の判断を決めつけることはできません。
ただ、その言葉を聞いたときに私は考えました。
平屋を建てるとき災害時のことまで考えて納得したうえで選ばれたのだろうか。
それとも平屋の暮らしやすさや間取りに目が向き、災害時のことまでは考える機会がなかったのだろうか、と。
◆ 平屋では上へ逃げる選択肢がない
垂直避難とは、洪水などで外へ逃げることが危険になったときに、建物の2階以上など、より高い場所へ移動することです。
2階建ての家であれば、1階に水が入ってきた場合でも、2階へ上がるという選択肢を持てることがあります。
一方平屋は生活空間がすべて1階です。
床上まで水が来てしまうと、家の中でさらに高い場所へ移ることが難しくなります。
外へ出ようとしても、すでに道路が川のようになっているかもしれません。
側溝やマンホールが見えなくなり、歩いて避難すること自体が危険になる場合もあります。
平屋では「危険になったら2階へ逃げればいい」という考え方ができません。
そのため雨が強くなる前に避難を始めることが大切になると考えています。
これは「平屋は危険だから建てないほうがいい」という話ではありません。
平屋の弱点も知り、土地選びや避難計画で補うことが大切です。
◆ 土地探しではハザードマップを確認する
土地探しを始めると、価格や広さ、日当たり、学校までの距離など、気になることがたくさん出てきます。
その中に、必ず入れていただきたいのがハザードマップの確認です。
・洪水の浸水想定区域に入っているか
・想定される浸水の深さはどのくらいか
・内水氾濫のリスクはないか
・土砂災害のおそれがある場所ではないか
・避難所までの道に危険な場所がないか
こうした点を、一つずつ確認してみてください。
ただし、ハザードマップに色がついていなければ、必ず安全というわけではありません。
想定を超える雨が降る可能性もあります。
地図には表れにくい小さな高低差や、排水の状態が影響することもあります。
ハザードマップは「大丈夫かどうかを決める答え」ではなく、土地について調べ始めるための入口として見ることが大切です。
◆ 雨の日にも土地へ足を運ぶ
気になる土地が見つかったら、できれば何度も現地へ足を運んでみてください。
晴れた休日の昼間だけではなく、朝や夕方、平日、そして雨の日にも見ておくと、土地の違う表情が分かります。
雨の日には、晴れた日には気づかなかったことが見えてきます。
・道路のどこに水がたまるのか
・側溝へ水が流れているか
・周囲の土地より低くなっていないか
・近くの水路に余裕があるか
・避難所までの道が通れそうか
現地へ行く場合は、安全を最優先にしてください。
大雨の最中に無理をして見に行く必要はありません。
小雨のときや雨が上がった直後でも、道路の水の流れや水たまりの位置を確認できます。
「ここは晴れていると、とても良い土地に見えたけれど、雨の日は道路から水が流れ込んでくるんだ」
そんな気づきは、現地を何度か見なければ分からないことがあります。
◆ 避難所へ行くだけが避難ではない
避難と聞くと、学校や公民館などの指定避難所へ行くことを思い浮かべる方が多いと思います。
ただ避難の目的は「避難所へ行くこと」ではありません。
危険な場所から安全な場所へ移ることが避難です。
安全な地域に住む親戚や知人の家へ早めに移動する。
状況によってはホテルなどを利用する。
自宅の安全性が確認できている場合には自宅にとどまる在宅避難も考えられます。
ただし浸水が想定される土地に建つ平屋で、「避難所へ行くのが大変だから家に残る」と判断するのは危険です。
平屋は上へ逃げる場所がないからこそ早めに動くことを前提にしておきたいところです。
家族で次のようなことを話し合っておくと安心です。
・最初に向かう避難先
・避難所へ行けない場合の第二候補
・子どものお迎えが必要な場合の動き
・ペットと一緒に避難できる場所
・車が使えない場合の避難方法
災害が起きてから家族会議を始めるのではなく、普段のうちに決めておくことが大切です。
◆ 設備や備蓄品を置く高さも考える
平屋を計画するときには、設備や防災用品をどこに置くかも考えてみてください。
信濃住宅の「木のひらや」では小屋裏スペースを設けることができます。
たとえば蓄電池について、製品の設置条件や温度、重量、点検方法などを確認し、小屋裏側へ設置できる場合があります。
1階が浸水してしまっても、高い位置にある設備が水につからず、電源が生きる可能性を残せるからです。
ただし、小屋裏であれば、どこにでも蓄電池を置けるわけではありません。
製品ごとの設置条件や夏場の温度、構造上の強度、配線経路などを確認する必要があります。
必ず専門業者と相談したうえで計画します。
また、小屋裏があるからといって、そこを人の避難場所として安易に考えるのもおすすめできません。
出入りの方法や天井の高さ、暑さ、外へ逃げる経路など、設備置き場とは別の安全確認が必要です。
それでも、
「もし1階に水が入ったら何が使えなくなるのか」
という視点で設備配置を考えることには意味があります。
飲料水や非常食、携帯トイレ、ライト、モバイルバッテリー、薬なども、床に近い場所へまとめて置くのではなく、少し高い場所へ分散しておくと安心です。
◆ 平屋の良さと弱点を知って選ぶ
平屋には、平屋ならではの良さがあります。
・階段の上り下りがない
・家事動線を短くしやすい
・家族の気配を感じやすい
・庭とのつながりをつくりやすい
・将来も1階だけで生活しやすい
私たちも、こうした暮らしやすさを大切にしながら「木のひらや」をご提案しています。
だからこそ、良い部分だけでなく、水害時には垂直避難が難しいという点も知っていただきたいと思っています。
平屋を選ぶ前に、
・土地の災害リスクを確認する
・雨の日にも現地を見る
・早めに避難する基準を決める
・避難先を複数考える
・設備や備蓄品を置く高さを考える
こうしたことを家族で話し合っておく。
そのうえで、
「私たち家族には、それでも平屋が合っている」
と選ぶことができれば、より納得感のある家づくりになると思います。
◆ まとめ|平屋は暮らしやすさだけでなく防災面も一緒に考える
平屋は、階段のない暮らしや短い動線を求める方に向いています。
一方で、浸水リスクの高い土地でも自宅にとどまりたい方や、災害時の早期避難が難しいご家族にとっては、慎重な検討が必要です。
大切なのは平屋が良いか、2階建てが良いかを一つの答えで決めることではありません。
土地の特徴や家族構成、避難先、暮らし方によって、選ぶべき住まいは変わります。
今朝のニュースで聞いた、
「平屋だったので、垂直避難ができなかった」
という言葉。
平屋を否定する言葉としてではなく、平屋を建てる前に、もしものときの動きまで考えるきっかけとして受け止めたいと思います。
家は暮らしを楽しむ場所です。
同時に、災害が起きたときに家族を守るための場所でもあります。
平屋を検討している方は、間取りだけではなく
「大雨が降ったとき、家族はどこへ逃げるのか」
まで、一度話し合ってみてくださいね。
◆ 平屋と土地について考えている方へ
信濃住宅では、平屋の暮らしやすさだけでなく、土地の特徴やご家族の暮らし方も伺いながら家づくりを考えています。
「この土地で平屋を建ててもよいのかな」
「小屋裏をどのように活用できるのかな」
そんな疑問がある方は、モデルハウスや施工事例を参考にしてみてください。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

