第4集 自分の目線
古い話で恐縮ですが、私が30歳になろうとしているころ、修身・斉家・治国平天下という詞があるのだよと教えてくれた人がいました。確か車の移動のとき だったと思います。 内容も教えてくれたのですがまだまだ若僧です、そんな難しい話は左の耳から入って右の耳に入って素通りです。そのころは大工の修行も終わって義兄と実兄達 が経営していた建売販売を主とした不動産の会社に入りました。
まもなく、不動産事業だけでは伸びなくなり注文建築専門の会社を興すことになり、私とふた回 りほど年上の方と二人で営業を始めたのが森吉工務店の出発でした。
注文建築の専門店としてのスタートでしたがそんなに簡単に受注があろうはずも無く、地元の方の注文をいただけるのに10年近く掛ったような気がします。 若いものですから毎日夢中で何年かは1年のうち10日も休まなかったのではないでしょうか。そんな過程の中で教わりましたのが、先の詞だったのです。
その後、四書五経のひとつ「大学」の中の教えに入っていることを聞かされました。四書五経という詞は聞いた覚えはありましたが、意味がわからなく、また 当時理解したとしても守れるものでもありません。
「正しい行いをして努力をし・家庭をととのえ・そうすれば国(会社)も治まる」んだよ、と教わった気がします。
私自身、自分に甘く、決して正しい道をあゆまず、家庭を顧みることをせず、なにひとつ当てはまるものはありません。努力ということもおおいに不足です。 今になって遅ればせながら当時の詞を思い出し、信濃住宅として出発するに当たり多くの方のご援助を得、多くの方に励まされなんとかここまで来ることができ ましたことに、改めて感謝申し上げます。
出発当時、まだ先の見えない会社に自宅のリフォームをさせていただき、続いて子息の住まいを依頼していただきました方に、つい最近のことですが「出発間 もないところへ良く頼みましたね」とたずねましたところ、「そりゃーお前、勇気がいったよ」いやはやふたりで大笑いをしました。
先ずは5年を迎えることができました、感謝の気持ちを込めてコンサートを開催させていただきます。職方一同、多くの参加をお待ちしています。これから も、自分にあった目線で会社を長く継続し、手がけた住まいがある限りメンテナンスを行わせていただこうと思います。